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覚王山日泰寺
タイ王国から寄贈された釈迦の遺骨を安置するために1904年(明治37)に創建され、どの宗派にも属さない超宗派の寺。
山号の「覚王」とは釈迦の別名を指す様で、寺号の「日泰」とは日本とタイ王国を表しています。
毎月21日の縁日は参道に多くの店が並び、昔は訪れる方の年齢層は高かったけれど、最近は若い世代をターゲットにした店も増え若い世代も訪れて賑わう。
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日泰寺参道、境内脇には覚王山日泰寺の八十八ヶ所霊場があり、当日は各札所には世話人の方がいてお茶やお菓子を振舞ってくれたりする。
そうして世話をされている方の年齢も高齢化を辿り、後継者がなく朽ち果てた札所も目に付く。
縁日に若者が訪れる様になったことを考えると覚王山日泰寺八十八ヶ所霊場も変化が必要なのかもしれない。
写真は山門の右手の1番、2番札所の眺め。
石仏の種類を見て覚えるにはいい場所かもしれないけれど、なかなか区別が付けれない所にもどかしさがある。
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覚王山日泰寺に鳥居があるのを御存知だろうか。
写真は五重塔の東側の通りから北に方向の眺め、桜の頃には花見しながらの散歩にはいい道筋。
今回の目的地「真清田弘法大師」はこの通りの先の日泰寺境内に鎮座しています。
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通りを進むとやがて右に道は曲がっていきますが、そこから日泰寺東参道の右をよく見ると東を向いて立つ鳥居が見えるはずです。
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鳥居の先には馬頭観音が向かい合う様に安置されています。
ここの石仏は他の札所とは少し趣が違い、この一画だけ単独となっています。
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真清田弘法大師全景、社名と明神鳥居はしっくりこない。
小さな境内の先に板宮造の社が2社、鳥居左に由緒書きが掲げられています。
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この2社には社名札は掲げられていない、どちらの社にどなたが祀られているのか分かりません。
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真清田弘法大師縁記
「御神殿に奉安せるは昔弘法大師巡錫の砌り尾張一の宮真清田神社に崇納し奉る念持石にして真清田神社の御神体なり。
明治維新廃仏毀釈の際、神社より分離し爾来竊に護持し其の縁由により真清田弘法と称すれども、本地には難陀跋難陀の二大竜王也経に曰く、此の二大竜王は首上に七頭竜あり通力自在にして我を念ずる者は願いに応じて衆生を利益し給う其の誓願に曰く。
一には命欲を離れて我を祈念する者は福を受くること佛に等し
二には瞋恚を離れて我を念ずる者は寿を迎えて保つこと佛の如く成らむ
三には愚癡を離れて我を祈念する者は楽を受くること佛の願に等し」

雨を掌る龍を祀るようです、恐らく大きい方の社に祀られているものと思います。
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話は昔弘法大師が真清田神社(一宮市)を訪れた時から始まるようです。
干ばつに見舞われていた当地、困窮した人々を救うため、弘法大師は雨乞いするも効果がなかったという。
そこへ一頭の龍が現れ、雨を降らせるためには、自分か他の龍の命が必要になると弘法大師に伝えたそうです。 
弘法大師はその龍に人々のためにその命を差し出してほしいと懇願し、引き換えに真清田神社にあなたを祀ると約束をしたところ、龍は承諾した。
やがて激しい雨が降りだし、黒雲の中からバラバラになった龍の体が落ちてきたそうです。
弘法大師はバラバラの死骸を纏めて、約束通りその龍を神として真清田神社に祀り、一時は境内の神池に鎮座する厳島神社に祀られてていたようです。それが龍神石だという。
そのことは真清田神社境内社「八龍神社」の解説に「もと厳島社内に奉祀されていたが、明治初年神仏分離の際御神体の龍神石が名古屋の日泰寺に流出、近年当社に還り改めて奉祀した」とあります。

1869年(明治2)廃仏毀釈により真清田神社から龍神石は流出し、その後さまざまな経緯を経て人の手を点々としたという。点々としたのも訳があったようで、それを所有すると禍が起ったと云う。
廃仏毀釈以降から1930年(昭和5)に日泰寺に「真清田弘法大師」と名を変え祀られるまでの所在はっきりしないようです。

真清田弘法大師縁記には真清田神社に崇納された御神体の龍神石(念持石)が奉安、その本来の姿は二大竜王であるとも書かれている。しかしそれを真清田神社に戻したことまでは記されていません。

この二社の内のどちらかに御神体が奉安されていて、真清田神社境内社「八龍神社」に返還されたとなると、一つの社から御神体はない事になってしまう。そしてもう一つの社はなんだろう。

日泰寺の創建は1904年(明治37)、覚王山日泰寺の八十八ヶ所霊場の起こりが1909年(明治42)に数人の発起人から始まったと云われています。
八十八ヶ所霊場がそうである様に一部の信者により真清田弘法大師が維持管理されているのかもしれない。それとて毎月21日の縁日や、それ以外でも扉が開けられているのを見たことがない、扉が開けられるのはいつなのか知りたいところ。
日泰寺のHPで真清田弘法大師について紹介はされていない。
分からない事の多い「真清田弘法大師」、龍神は今もいるのだろうか。
2021/2/20

覚王山 真清田弘法大師
創建 / 不明
祭神 / 不明
住所 / ​名古屋市千種区法王町1-1
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